研究概要 |
ポルフィリンの錯形成反応は非環状配位子に比べて10^8倍遅いけれども, イオン半径の大きい水銀, カドミウム, 鉛によって約10^4倍促進されることを見出した. この結果に基いて, ポルフィリン担持樹脂による金属イオンの速度差分離を行うために(1)金属イオンとポルフィリンとの錯形成反応速度の測定, (2)バッチ法によるポルフィリン担持樹脂への金属イオンの分配係数の測定, (3)カラム法による金属イオンの速度差分析を行なった. 更に(4)アミノ酸の分離分析法について研究した. (1)水溶性ポルフィリン(5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)ポルフィン(H_2TPPS_4)と亜鉛, カドミウム, 水銀との錯形成反応の速度はそれぞれ1.59,4.86×10^2,>10^3(単位=mol^<-1>dm^3s^<-1>)であった. (2)ポルフィリン(H_2TPPS_4)を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA-401)に吸着させてポルフィリン担持樹脂を作り, バッチ法により水銀との分配係数を種々のpHにおいて求めた. その結果pH4〜6の間で分配係数(Kd)は最大となりKd=63cm^3g^<-1>であった. (3)ポルフィリン担持樹脂をカラム(長さ20cm×直径1cm)につめてpH5に調製した試料溶液20cm^3を流した. 更にpH5の緩衝液で溶離した. 5cm^3すつ分画しジチゾン法により亜鉛, カドミウム, 水銀の濃度を測定した. 上記の結果から予想されるように亜鉛>カドミウム>水銀の順で溶離してきた. 亜鉛は全く吸着されないので亜鉛, カドミウム, 水銀の速度差分離分析に成功した. (4)種々のアミノ酸を含む溶液を上記のカラムに流すとVal>phe>Tyr>Trpの順に溶離することを見出した. これは均一溶液中におけるH_2TPPS_4とアミノ酸との分子錯体の生成定数と関係づけられた.
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