研究概要 |
塩類水溶液および純水と平衡に存在しているそれぞれの水蒸気を, 水素ボンベより導入した水素ガスと, 疎水性白金触媒上で, 水素同位体交換平衡に到達させた. 到達後のそれぞれの水素ガスの水素同位体比(D/H比)を質量分析計で測定した. その両者の比をとり, βと定義した. β=R^<H_2(g)>_<P.W.>/R^<H_2(g)>_<Sol.>(R^<H_2(g)>_<P.W>;純水と平衡に存在する水素ガスのD/H比R^<H_2(g)>_<Sol.>;水溶液と平衡に存在する水素ガスのD/H比)今年度に行った研究によって得られた新たな知見・成果を, 交付申請書の4つの要因に関して順に述べ, 今後の研究計画についてもふれる. 1.塩の種類;25°Cにおいて, 昨年°までに得られていたアルカリクロライド(LiCl, NaCl, KCl:CsCl)および本年度得られたNaBr, KBr, NaI, KIの結果は, すべてβ<1となり, これらアルカリハライドの水溶液と平衡に存在する水素ガス(水蒸気)のD/H比は, 純水と平衡に存在する水素ガス(水蒸気)のD/H比よりも高くなった. このことから, これらアルカリハライドの水溶液においては, 水和圏内の水分子は, 水和圏外のいわゆるフリーな水分子よりも, HDOが枯渇していると推論できる. 2.濃度依存性;およそ6mまでの低濃度域では, 上記の1の各塩において, βの値は, その重量モル濃度(m)と直線で近似できた. 3.温度依存性;地球化学的に有用なNaCl水溶液において, 40, 60, 80, 95°Cの各温度において, 2, 4, 6mの各濃度のβの値を求めた. 昨年度までに得られた10, 25°Cの結果を入れると, 2, 4, 6mの各濃度において温度の上昇とともに, βの値はパラレルに1に近づいた. 今後, 新たに実験器具(反応容器)を開発し, より高温(100°C以上)のデータを得る計画である. 4.加成性;塩の混合溶解における加成性の検討は地球化学的試料の解釈に重要であり, 今後の研究課題である.
|