研究概要 |
イオン粒子と固相の相互作用の場に於て, アルカリ金属イオンが種々の化学種に付加(アタッチメント)する現象がしばしば観測される. 本研究は, この現象を利用した新しいイオン化法としての検討を行い, カチオニゼーション法と言えるこの方法を質量分析法に応用することを目的とした. 1.本課題を進めるにあたり, もっとも重要なことは, 大きい強度の長時間安定な一次イオンとしてのリチユウムイオンビームを作ることである. このために表面電離を利用したフィラメント型のリチュウムイオン源を製作した. 1Li_2O:2Sio_2:1Al_2O_3の組成のシリケートを球状にして, pt線(0.2φ)にビード状に固定し, それを加熱することによりL1+イオンを作った. 充分の強度が得られた. 2.試作した表面電離型アルカリ金属イオン源を用い, 数torr付近で各種有機物(アセトン, ベンゼン, トルイジン)にアルカリイオン(今回は主にL1+イオン)を反応させ, その付加生成物を測定するための装置をアセンブルした. 装置の主体は, 島津のICP/MSの試作機を改造したもので, その構成は, イオン源(反応ケエンバー, 一次イオン, としてのL1^+イオンの発生源を含む), サンプリングインターフェイス, 差動排気系, イオンレンズ系, QMSと検出部, 試料導入系とした. 3.2.8×10^<-9>g/secのアセトンをイオン源に導入した時, 付加イオンの電流値, 2.9×10^<-13>Aが得られた. イオンカウンティング法で測定した場合, 最小検出感度は, 10^<-14>g/secのオーダーになることが期待でき, カチオンゼーション法が, 新しい化学イオン化法として高感度な手法になることが確認できた.
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