研究概要 |
地球的規模での炭素循環の主要なものとして, 生物活動によるメタン(CH_4)放出→大気中酸化→CO_2水圏・植物相への取込みがあり, このCO_2は地球温暖化に係る要素の一つとして重要である. 一方, 大気中OHラジカルにより開始されるメタン酸化はその過程を通じてさらにOHを消費したりHO_2を生成したりするためにHOx等大気中活性化学種の濃度を左右することから, その反応過程の詳細を明らかにすることは大気化学上重要である. 本研究では内容積6m^3の環境大気反応シミュレータを用いた実験(成果1)と, レーザー誘起蛍光法(LIF)を用いた実験(成果2)により, 上記のメタン酸化過程について以下のような成果を挙げることができた. 1.アゾメタン/空気系光照射実験(CH_3N_2CH_3+hU→2CH_3+N_2)をCH_4+OH→CH_3+H_2O反応系のモデル反応系として, バックグラウンド大気中で重要となる2×CH_3O_2反応の分岐比を求め, またその値の反応温度依存性を初めて明らかにした. 成果の中でも特に重要な点として, 低温になるに従ってOHラジカルに対する反応性が最も低いCH_3OHを生成する分岐比が高くなることが明らかになった. 2.メチルヒドロペルオキシド(CH_3OOH)は1の実験の中でもCH_3O_2+HO_2→O_2+CH_3OOHの反応で主生成物として分析されるメタン酸化過程中の重要中間生成物であるが, この化合物の大気中主要消滅過程であるOHラジカルとの反応速度定数をLIF法により初めて直接的に決定した. その値は従来報告されていた値の約1/5であることが判明し, 気相反応による消滅は遅い事が判った. 1, 2の成果は, いづれも雨水への溶け込み等CH4の形で大気中に放出されたCがCH_3OH, CH_3OOHの形で不均一除去過程により大気中より取り除かれる可能性が従来考えられていた以上に高いことを示唆しており, CO_2増加の将来予測をする上でも重要な成果である.
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