研究概要 |
本研究は主に(A)シクロデキストリン(CDx)によるイオン性基又は有機多座配位基(エチレンジアミン, ポリアミン)を導入することによる機能化及びそれらの大量分取と(B)複雑な分子包接化反応をreal timeで解析するためのデーター処理装置の試作・導入の二点に焦点をあてて遂行した. (A)β-CDxの一級水酸基をエチレンジアミン(en), トリエチレンテトラミン(trien), ピリジン(py), トリメチルアミン(tma), Na_2SO_3に変換したβ-CDxen, β-CDxtriene, β-CDxpy^+, β-CDxtma^+, β-CDx-SO_3^-等を合成した. さらにβ-CDxenについてはシッフBase化したβ-CDxsalenの合成を試みた. 一方, α-CDx系の修飾は上記β-CDx系に比較して大変困難でα-CDxPyの合成についてのみ成功した. 大量分取(1-5gスケール)はゲル濾過機能を有するイオン交換樹脂Toyopear1 650Mを充填したガラスカラムで行なった. 検出にはRI及びUVを純度のチェックは分析用HPLC装置を使用した. 分取型HPLCによる大量分取はまだ成功していない. (B)二つ以上の緩和過程を含む分子包接化反応の解析をreal timeで行なう為にデーター処理装置を試作・導入し, 既存のストップドフロー(SF), rapid Scan(RS), 及び温度ジャンプ(TJ)装置との接続を試みた. その結果, SF, RSでは成功したが, TJについては今後の検討を待つことになった. 本処理装置は2000点のデーターを平滑処理し, 最大500点を解析に使用する. 反応曲線の指定区間をGuggenheimプロットにより解析しそれを初期値として, さらにDumping Gauss-Newton法による非線形最小二乗法で最終値を決定する. この解析法は, 一相反応y=ae^<-bx>+c及び二相反応y=a_1e^<-b1x>+a_2e^<-b2x>+cに適用できる. 特に後者においては従来の解析時間を大幅に短縮する事ができた. これは詳細な温度変化の研究を可能にするものである. 現在, (A)で合成・分取した機能性CDxの分子識別・分子認識の動態解析の研究を(B)で完成したデーター処理システムを用いて続行中である.
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