研究概要 |
1.脱窒菌(アルカリジェネスとアクロモバクター)からチトクロムC′を単離, 精製し, 還元下でNOを作用させた. NO分子はヘム鉄の第六配位座に結合するが, 同時に, 第五配位座のヒスチジンイミダゾール窒素と鉄の結合が切断されることが, 吸収スペクトルシャMCDスペクトルの測定により明らかとなった. この時, プロトポルフィリンIXのNO誘導体を, チトクロムC′のNO誘導体のモデルとして合成し, 分光学的に同定を行った. 脱窒菌チトクロムC′の第五配位座の配位子の切断現象は新しい知見であり, 既に報告のある光合成最近のチトクロムC′のNO誘導体(六配位構造)と異なり, 両者のヘム環境が異なるという点で興味深い結果である. 2.上記の脱窒菌チトクロムC′にCOやCNイオンを作用させ, それぞれの誘導体を調整した. COやCNはヘム鉄の第六配位座に結合するが, NOの場合と異なり, 第五配位座のイミダゾールは切断されず, 六配位型のヘム誘導体であることが明らかとなった. この研究でも, 既報のヘモグロビンやチトクロム等のCO, CN誘導体の分光学的データと比較検討を行った. 3.脱窒菌チトクロムC´の水溶液に, アセトンや各種アルコール等の有機溶媒や, 界面活性剤を添加すると, 酸化型ヘム鉄のスピン状態が, 中間スピンから低スピンに変化することを見い出した. 低スピン状態では, 第五配位座は中間スピン状態と同じスチジンイミダゾールであり, 第六配位座にはアミノ酸側鎖が新たに結合するわけであるが, この側鎖はイミダゾール, あるいはリジンのアミノ基等が考えられた. 4.脱窒菌アクロモバクターサイクロクラステスから, タイプI銅とタイプII銅の2種類の銅を含む亜硝酸還元酵素を単離した. 吸収, CD, ERPスペクトルを測定した結果, タイプI銅は対称性の低い, EPRシグナルに異方性を持つ銅であることがわかった.
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