研究概要 |
トランスー1, 4-シクロヘキサンジカルボン酸銅(II), テレフタル酸銅(II), および2, 6-ナフタレンジカルボン酸銅(II)に関して, 炭化水素分子の吸蔵量の温度変化を測定した. いずれの化合物も, エタン, プロパン, ノルマルブタン, イソブタン, ネオペンタン分子を吸蔵した. 吸蔵量は, 吸蔵される分子の大きさが大きくなるほど少ない. ネオペンタンが吸蔵される分の大きさの限界である. 三つの化合物における吸蔵量の違いは, 窒素では倍近いが, 分子が大きくなるほど差は小さくなっている. これは空隙の構造を反映している. 吸蔵量の温度変化から求めた吸蔵熱は, それぞれの分子の蒸発熱のおよそ2〜3倍になっている. 化合物間での差は小さく, 吸蔵量との相関はないと考えられる. トランスー1, 4-シクロヘキサンジカルボン酸銅(II)に吸蔵された酸素の磁化率の温度変化を測定した. この化合物は銅1モルあたり最大1.23モルの酸素を吸蔵する. 今回の測定では, 技術的な問題から, 磁化率を測定した系では, 銅1モルあたり, 1.0モルの酸素を吸蔵させた. 磁化率を4.2Kから43Kまで測定した. 4.2Kから10Kまでは単調に減少し, Curie則で説明できる. 10K以上では, 磁化率が増加し, 31Kで極大を示す. この温度変化は, 単量体の酸素分子と二量体の酸素武士が存在することによる. モデルfittingによると単量体の割合は8.1%である. 二量体内の酸素分子間の交換相互作用の大きさは, 温度に換算して35Kである. これは固体酸素の値と同じ位である. Fittingの際には交換相互作用として, ハイゼンベルグ型よりイジング型の方が再現性がかなり良い. これは, 相互作用の異方性による.
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