研究概要 |
現在汎用されているSephadex系イオン交換樹脂よりも, 高性能でしかも物性の良い樹脂の開発を目的に, トヨパールHWを原料とする樹脂の合成条件を検討した. 排除限界の異るHW-40S,-50Sあるいは5・5Sについて, 交換基の構造, 反応温度, 時間等を因子として各種樹脂を合成し, 得られた樹脂の分割能を調べた. その結果HW-50Sから得た一つを最適樹脂と決定した. 先づ樹脂の物性はSephadexに比べてはるかに優れている. 次にこれを用いて, 全ての型(陽, 陰イオンおよび中性)について行った各種錯体の分割の結果を列挙する. 1.陽イオンおよび中性錯体について, Sephadex系の結果と比較した. 例えば, 〔Co(en)_3〕^<3+>錯体の完全分割において, 時間で5分の1, 目的物の溶出液量は10分の1であった. 他の多くの錯体についても高効率で完全分割することができた. (J.Cood.chem.,印刷中) 2.陰イオン錯体の分割は, これまで多くの試みがなされてきたが, 完全分割は困難であり1981年始めて報告された. しかしその効率は低く, 乗用性はない. 本研究では常識的には考え難い, 陰イオン同志のキラル認識という現象に基づいて完全分割できた. しかもその効率は比較的分割の容易な陽イオンの分割より勝っている. 18種の陰イオン錯体の分割を行ない, 機構の定性的説明ができた. しかしその本質は, 最近発展してきた溶液化浮でも未開拓の分野であり, 今後の課題である. (Chgm.Lett.,投稿準備中) この研究を通じて, 本補助金で購入した分光光電計とポンプは, 労力の軽減および時間の節減のみらず, 精度の向上に大きな役割を果した. 今後の展開の一つは上記陰イオンの分割に関する研究を発展させることである. また生命化浮の時代において, 生体関連物質の分割は重要である. 現在研究の遅れている合成規模での分割, 即ち分取クロマトグラフィーの新方法の開発を計画している.
|