研究概要 |
(1)4種類のニトリル類溶媒{アセトニトリル(MeCN), プロビオニトリル(PrCN), ベンゾニトリル(PhCN), アクリロニトリル(AN)}8種類のアルコール溶媒, 及び4種類のアミド溶媒中{ホルムアミド(fa), N-メチルホルムアミド(mfa), N,N-ジメチルホルムアミド(dmf)におけるNi^<2+>溶媒和イオンの電子スペクトルを測定し, これらの相対的な溶媒の配位力, coordination power(=CP), を決定した. (2)上記溶媒を用いてCd(ClO_4)_2の^<113>CdNMRスペクトルを測定した. 化学シフトは, ニトリル系では, MeCN(25)>PrCN(22.3)>PhCN(10.3)>AN(14.0), アミド系ではfa(-44.7)>mfa(-49.4)>dmf(-50.6), となり, いずれの溶媒系列においてCPが大きいものほど^<113>CdNMRシグナルは低磁場側にシフトするという注目すべき結果を得た. このことは同じ官能基を有する溶媒のCPが極めて信頼できる尺度であることを示している. さらに金属-溶媒結合の性質は官能基によって著しく異なることが理解される. これは金属イオンの関与する反応, 平衡, 構造に及ぼす溶媒効果を解明するための一つの指針を与えている. (3)各種溶媒中におけるCd^<2+>, Cu^<2+>, Ag^+, Tl^+, Li^+, の半波電位, 溶媒間移行のGibbsの自由エネルギー, 錯体の安定度定数及び^<113>CdNMRシグナルに及ぼす溶媒効果についてCPから検討した. Cu^<2+>, Cd^<2+>イオンでは上記溶媒効果はCPと極めてよい相関があることを見出した. これはCu^<2+>, Cd^<2+>やNi^<2+>イオンに極めて近い性質を示すためであると結論された. Ag^+イオンではニトリル溶媒が大きなずれを示しAg-ニトリル結合が強いことが実証された. 一方Li^+イオンでは逆にLi-ニトリル結合が弱いことが明らかにされた. 以上のことからCPはhardness-softnessがNi^<2+>イオンに類似しているものには十分適用できると結論された.
|