研究概要 |
1.taec(N,N′,N′′,N′′′-テトラキス(アミノエチル)-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)のクロム(II)錯体Cr_2(taec)X_4(X=Cl,Br)をアルゴン雰囲気下で合成した. 一般にクロム(II)化合物は空気中の酸素に対し極めて敏感であるのにもかかわらず, 今回得られた結晶は, taecの立体効果から予想されたように, 乾燥空気中で安定で, 1ケ月放置してもほとんど変化が認められなかった. 2.taec類似の八座配位子tpmc(N,N′,N′′,N′′′-テトラキス(2-ピリジルメチル)-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン)を合成し, 7種の銅(II)錯体Cu_2(tpmc)(ClO_4)_4(1),Cu_2(tpmc)(OH)(ClO_4)_3・2H_2O(2),Cu_2(tpmc)(OH)(BF_4)_3・H_2O(3),Cu_2(tpmc) (NO_3)(PF_6)_3(4),Cu_2(tpmc)(CH_3COO)(ClO_4)_3(5),Cu_3(tpmc)Br_6(6),Cu(tpmc)(ClO4)2・3H2O(7),および2種の銅(I)錯体,Cu_2(tpmc)(ClO_4)_2(8),Cu_2(tpmc)(PF_6)_2(9)を単離した. これらは(7)を除きすべて二核構造をとっている. このうち2と4についてX線結晶構造解析を行った. 2は独立した二核錯陽イオン[Cu_2(tpmc)OH]^<3+>をもち, 各Cuはシクラム環の2個の窒素と2個のピリジン窒素と結合し, OH^-はその二つのCuの間にあってその両方に配位している. 4でもNO^-_3が二つのCuと二座配位で結合しているが, 一方は軸配位であるが, 他方は平面内配位となっている. 銅(I)錯体8, 9はメタノール中で容易にO^2と結合するが, 室温で直ちに分解して青色となる. 一方低温(-70°〜-80°C)では, O_2と可逆的に結合することを^<18>O_2を用いた共鳴ラマンスペクトルによって確認することができた. ^<18>O_2を用いて銅酸素錯体の存在の確認された例はまだ二例ほど報告されたに過ぎないので, 今回の結果は新しいヘモシアニン活性部位モデルとして興味深い.
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