研究概要 |
本研究では寄生蜂幼虫間に見られる種内・種間両競争の機構を解明しようとした。まず、研究材料であるアズキゾウムシの幼虫・蛹に寄生する3種の寄生蜂、Anisopteromalus calandrae,Dinarmus basalis,Heterospilus prosopidis,が、1匹の寄主に対して重複寄生することを確認した。次に、豆内の寄主幼虫を特殊容器に移し、別に採取した寄生蜂卵をら寄主幼虫上に移植することによって、寄生蜂幼虫間の競争を実体顕微鏡下で観察する方法を開発した。この方法を用いて以下の実験を行なった。 1.1寄主に同時に同種の複数個の寄生蜂卵を移植し、羽化寄生蜂数を調べた。いづれの種においても、1寄生から1匹の寄生蜂が羽化した。 2.同様の実験を、2匹の寄生蜂卵の寄主への移植時期を違えて行なった。移植間隔が72時間以上の場合、先着者が寄主をほぼ利用しつくし、後着者は羽化できなかった。しかし、48時間の移植間隔では、後着者が先着者を攻撃し、最終的には後着者が羽化した。干渉型、消費型両競争形式がいづれの種の種内競争にも存在することが証明された。 3.これら3種の寄生蜂の幼虫間の種間競争の機構を調べる実験を行なった。3種を、2種ずつの3つの組み合わせに分け、それぞれの組み合わせにおいて、2種の寄生蜂の卵1個づつを1匹の寄主上に移植した。先の種内競争の場合と同じく、1匹の寄主から必ず1匹の寄生蜂が羽化した。2種が同時に孵化するように用意した実験では、ある特定の種が優位に立つことはなく、それぞれの種がほぼ50%の確立で羽化した。一方の種の卵が他方の種の卵より一定時間早く孵化するように用意した実験では、いづれの組み合わせにおいても、先着種が後着者を圧倒し、その度合いは孵化の時間間隔が長い程顕著であった。
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