研究概要 |
自然界の窒素循環で重要な役割をしている脱窒の機構のうち, 一酸化窒素(NO)還元の機構はほとんど明らかでない. 特にNO還元酵素(NOR)の酵素化学的実体については全くわかっていない. 私達は脱窒光合成細菌Rhodobacter sphaeroides f.s. denitrificansの脱窒の機構を調べてきたが, 今回NORを分離精製することを試みた. 光にNORはチトクロームbc1複合体(bc1 complex)上にあると推定される結果を報告したが, 今回Trumpowerらのdodecylmaltosideをdetergentとしてbc1 complexを調整する方法を採用し, NORはbc1 complexとは異なるfraction(Reaction centerを含む)に依存する事が認められた. 脱窒光合成培養したcellからクロマトフォアを調整し, dodecylmaltosideが可溶化後, DEAE Biogel AクロマトグラフィーでNOR fractionとbc1 complex fractionに分離した. 両fractionは更にDEAE Sepharase CL6B, Sepharose 6Bクロマトグラフィーで精製した. NOR活性, Ubiquinol:cytochrome C reductase活性の回収率はそれぞれ7%, 5%であった. NOR fractionにもcyt.b,cは存在しその比は約1:2で, bc1complexのcyt.b,cのcyt.b,cの比は2:1であった. SDSPAGEにより両fractionを構成するペプチドの分析で, bc1 complexは報告の通りcyt.b,c1,FeS protein,13 kDa proteinより構成され, NOR fractionにはFeS protein,13 kDa proteinは無く, cyt.b,c1のバンドとReaction centerのH,M,L subunitと, さらに45kDaと38kDaのバンドが認められた. NOR fractionについてはさらにPhenylsepharose CL4Bの疎水クロマトグラフィーを行うと, NOR活性は3%Tween20または1%Triton X100で溶出され, そのfractionに上記の45kDa, 38kDaのpolypeptideが存在した. 2つのpolypeptideの一方がNORと関係あるものと推定した.
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