研究概要 |
C_4光合成の律速・制御要因に及ぼす環境(主に光強度)変化の影響について明らかにするために, 各細胞画分における炭素代謝中間体のレベルの測定を行なうことを目的とした. トウモロコシの凍結乾燥葉を排水溶媒で摩砕し, 5つの比重の異なる画分を得た. その結果, 比重1.26〜1.29の画分には, 葉肉細胞細胞質, 維管束鞘細胞葉緑体, 同細胞質をほとんど含まない, 高度に純化された葉肉細胞葉緑体を得ることが出来た. これはC4植物における同様の研究の唯一の例である, Slackらの成果(葉肉細胞葉緑体と同細胞質の分離は再現性よく得られなかった)と比較して, 格段に進歩した画期的なものである. また同画分における, ミトコンドリア, パーオキシゾーム, 液胞の混在はそれぞれ約20%, 10%, 20%であった. 即ちこの方法により初めて, 葉肉細胞葉緑体でおきている中間体のレベルの変化だけをとり出して解析することが可能になった. C_4光合成を律速する要因の一つであるピルビン酸リン酸・ジキナーゼは光強度により著しくその活性が調節されている. 本研究課題を明らかにすることの一つは異なる光強度が実際どのようなことを引き起こし, 同酵素の活性を調節しているかである. invitroの実験系から同酵素の活性調節にはピルビン酸の濃度変化が重要であることが示唆されている. そこで最大日射量の約1/4と1/20の光強度のもとで, 同酵素の局在する葉肉細胞葉緑体中のピルビン酸を上記の方法で測定したところ, 10mMと2mMで, 光量に応じてピルビン酸のレベルが変化していることが明らかとなった. しかし, 2mMのピルビン酸下では同酵素はまったく不活化されないことがinvitroの系で示されているので(Budde R.J.A.ら 1986), 今後, 更に同酵素のinsituにおける光強度の変化に応じた活性調節のしくみの実体について明らかにしていく必要がある.
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