研究概要 |
緑藻Micrasterriasは半細胞構造をとり, 各々の半細胞は5つの小葉を有する複雑な形態の単細胞生物である. このような細胞内で, マイクロフィラメント(MF)がどのように分布しているのか, また, このような複雑な形態が形成される過程でMFの分布がどのように変化するのかについて研究した. 細胞をグルタールアルデヒドで固定し, ローダミン・ファロイジンで処理した後, 蛍光顕微鏡で監察した. 細胞中には, 6つの領域に特徴あるMFの束が観察された. 1.原形質膜直下の網目状のMFの束, 2.葉緑体表面のMFの束, 3.細胞中央部に位置するMFの束, 4.突起の先端に位置する短く太いMFの束, 5.中央狭部をリング状に取り巻くMFの束, 6.核周辺部のMFの束, である. これらのうち, 細胞中央部に存在するMFの束(3)が細胞の形態形成に深く関与していると考えられた. 分裂していない細胞では, 中央部に存在するMFの束(3)は, 各々の小葉の先端から中央狭部を通り, 相対する半細胞の対称な位置関係にある小葉の先端に走っていた. 中央狭部に隔壁ができ細胞分裂が起っても, 細胞内のMFの束の分布は変化しなかった. 隔壁の部分ではMFの束は原形質膜に付き, 隔壁部分がふくれて半球状の娘半細胞ができると, MFの束は原形質膜に付いたまま娘半細胞中に伸びていった. 娘半細胞が半球状→3葉→5葉と分化する過程では, MFの束は中央狭部から, 伸長していく小葉の先端部に放射状に走っていた. これらのMFの束は, 小葉先端部の原形質膜に付き, 常に小葉の分化に先だって二分した. 以上の結果から, 形態形成におけるMFの関与の仕方に2つの可能性が考えられた. 1.MFの束の伸長が小葉の先端を押し, 小葉の伸長が起る. 2.MFは小葉の伸長に必要な物質の通路として積極的に物質を運ぶためMFの束の末端で小葉を伸長する. Micrasteriasに関する他の実験結果も検討し, 2の可能性が高いと結論した.
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