研究概要 |
ショウジョウバエの極細胞(予定始原生殖細胞)の形成その生殖細胞への分化という一連の過程は複数の細胞質因子により調節されていることが, 本申請者の従前の研究により示唆されて来た. 本研究は, それら細胞質因子のうち, すでにCDNAがクローン化されているRNAによって誘発された(生殖細胞決定因子を含まない)極細胞が, 果してPエレメントを発現するという性質を示すかどうかを検定することにあった. (Pエレメントは生殖細胞系列の細胞でのみ発現するとされていた). この目的のために, Pエレメントの第3イントロンを含むPvuIIサイト(1481番目の塩基)とSalI(2414番)との間のDNA断片を切り出し, この下流に大腸菌のβガラクトンダーゼ遺伝子を継ぎ, プロモーターとしてはSV40後期遺伝子, またはhsp70(ショウジョウバエのヒートショック遺伝子の一つ)のものを継いで作った雑種遺伝子をカーネギー20ベクターに組込み, これを常法に従ってry506系統のβ-gal-1nl(βガラクトンダーゼ欠損突然変異)にマイクロインジェクションして, 形質転換系統をスクリーンした. 得られた形質転換系統を増殖させ, その生殖細胞系列, 体細胞系列においてβガラクトンダーゼ活性が存在するかどうかを検出した. 現在までに, 顕著な酵素活性を認めることに成功していない. 先ずSV40のプロモーターを試みたため, このプロモーターがショウジョウバエ細胞の中で充分機能しなかった可能性, およびPエレメントの第3イントロン部域のみが存在しただけでは, たとえ生殖細胞中にあってもこれをスプライスすることが出来ない可能性(あるいはその他原因不明の欠患の可能性も否定出来ないが)が考えられ, 原在hsp70を使った雑種遺伝子で形質転換をおこなっており, Pエレメント全長を含む雑種遺伝子作成中である. 来年度も, 引続き研究継続し, 最終結果が得られた段階で発表する予定である.
|