本研究の目的である海岸砂中間隙に棲息する貝形虫の系統発生の考察のために、最終年度である本年度は、当初の研究実施計画にそって以下の項目を実施したが、後述の様に一部変更をよぎなくされた。 1.北海道南部の松前付近と東部の厚内付近て補足調査をそれぞれ8月と5月に行った。前者は昨年度発見した陸生間隙種(Ierrestricythere sp.)の追跡調査である。 2.北海道産間隙貝形虫の分類・記載:新種Microloxochoncha kushiroensisが印刷公表された。Psammocythere属の1新種、Cobanocythere属1種、Microcythere属3種の記載を終了した。 3.Psammocythere属の考察から、本属を含むCytheracea上科で見られる付属肢の原始的形態が、陸水棲・海水棲を問わず、間隙に棲息する種類でのみ保存されていることが示された。 4.フイ-ジ-産間隙貝形虫Pussellidae科2新種の記載を行う機会を得た。同属の種類がインド洋コモロ諸島から報告されており、間隙種の分布に関して新しい情報を得た。 以上の研究成果をもとに、間隙貝形虫の持つ形態についての考察、および、各分類群の形態、分布に基づく系統分類学的検討が現在進行中である。 研究代表者が平成元年11月より平成2年3月末まで、第31次南極地域観測隊の一員として、南極大陸:セ-ル・ロンダ-ス山地およびアムンゼン湾岸の生物相調査に当たることになったため、本研究のまとめの公表は帰国後行うことになる。 なお、南極大陸の海岸で間隙貝形虫の調査する機会があれば、これを実施し、本研究のまとめのための一部に加える予定である。
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