研究概要 |
温帯に棲む多くの鳥類には明確な年周期があるにもかかわらず,この繁殖年周期をかたちずくる内分泌機構に関する知識は乏しい。繁殖の開始機構に関しては,日長の増加という光周性刺激がゴナドトロピン分泌を促す。ところが,ゴナドトロピンの分泌がどのような機構で終息するか必ずしも明確ではない。 これまで,実験室内で温度や餌など飼育条件を一定にして,光条件だけを変えることによってLH分泌の調節メカニズムを調べてきたが,長日によりLH分泌を誘導できるにもかかわらず,短日操作によってLH分泌を終了させることはほとんど出来なかった。ところが,ウズラを屋外に出し,餌だけは一定に与え,その他の条件は自然に近い状態で飼育一年半にわたり採血し,LHを測定した結果,実験室と異なり明確な年周期が見られた。ウズラと近縁なボブホワイトを用い,ウズラと同じようにLHの年周期を調べたところ,同じように血中LH濃度に年周期が認められた。そこでLH分泌への外気温の影響を調べたところ,短日条件と低温を同時に与えると,。LH分泌巣を完全に抑制出来ることが明らかになった。そこで温度に関係があるサイロキシンを測定したが,明確な年周期は認められなかった。 LHの年周期を調べると,LHが下がりはじめる頃はまだ外気温がそれほど低くはなく,むしろ温度の変化率が大きい。そこで光条件を16L8Dから12L12Dにして,温度を暗期にのみ低くした。その結果,この条件でもLHの放出は完全に抑制されることがあきらかになった。 日長の変化に伴って変化するホルモンであるメラトニンのLHへの影響を調べるため,松果体除去,眼球除去などの操作を行って光条件を変えたが,LH分泌への影響は見られなかった。外気温がLH分泌をどのように抑制しているかを調べる必要がある。
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