研究概要 |
本研究は、新潟県五頭山地を典型事例、新潟県櫛形山地と、兵庫県六甲山地などを比較事例として、中期更新世以後に急激になった山地のブロック隆起と土石流の発生の関連を追及することにある。2年間の研究成果の概要は以下のようである。 1,上記の3山地に加えて、滋賀県鈴鹿山地西麓、富山県北アルプス北縁山地麓の概査をおこなった。その結果、いずれの山地も中期更新世に大量の土石流の発生が確認された。これは、五頭山地や六甲山地で典型的に示されていた、中期更新世から山地の"成長"がより急激になったことが、広範な地域で確認されたことを意味する。 2,それぞれの山地の急激な"成長"は中期更新世以後に加速した、ブロック隆起運動によるものである。その典型的事例として五頭山地では、この時期に落差100mをこえる断層崖が形成したことが確認できた。 3,興味深い事実として、六甲山地の大量の土石流の発生期は、他の山地とくらべて若く、中期更新世末である。これは、土石流の発生が、一定の山地起伏量の存在を条件とするため、六甲山地は他の山地より遅れて、中期更新世末にその起伏量に達したものと解釈できる。 4,五頭山地、櫛形山地、六甲山地においては、中期更新世後も、後期更新世初期に土石流の発生が確認され、さらに、近年も大きな土石流災害をうけている。これらは、現在も活発に続いているそれぞれの山地のブロック隆起を反映したものと解釈できる。 5,第四紀後期における土石流の発生が、山地の"成長"すなわち、ブロック隆起と対応することは、侵食域である山地のネオテクトニクスの解明と、土石流災害の地質学的解明に貴重な資料を提供する。
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