研究概要 |
人形峠地域の花こう岩については, まず野外において風化分帯を行い, かつ粘土鉱物組成・化学組成を求め, 風化溶脱の実態を明らかにした. 岩石あるいは構成鉱物の固さや変質の度合, および全岩のかさ密度などに基づき, 風化殻には階層構造があり, 4帯に分帯することができる. 即ち, 上位より, 密度が1.30g/cm^3以下でカオリナイト・ハロイサイトを産するI帯, 密度1.31〜1.74g/cm^3でハロイサイト・モンモリロナイトを産するII帯, 密度1.75〜2.45g/cm^3でモンモリロナイト・バーミキュライトを産するIII帯, 及び密度2.46g/cm^3以上で, 風化変質が微弱かあるいはほとんど認められないIV帯である. さらに, 化学分析値とかさ密度の値から, 一定体積の試料の溶脱量, 溶脱率, 孔隙率, および二次生成粘土鉱物の量をノルムで計算した. その結果, 風化殻の下部から上部に向い, 石英がわずかに減少し, 斜長石が大幅に減少すること, 斜長石は風化初期から溶脱が始まり, 最末期には90%以上も溶脱すること, 正長石は風化の中期ごろから急激に溶脱が始まること, さらに, これらの溶脱と二次鉱物の生成とがきわめてよく関連していることが明らかになった. 瑞浪地方に関しては, 基盤の花こう岩の風化については, 同様の結果が得られた. 瑞浪層群については, 地表の露頭の試料だけからはその風化の実態があまり明確にならない. 今後ボーリング試料を入手して検討する予定である. 広島県三原市北方の花こう岩と新生界塩町層・山砂利層については, 現在実験を続けているが, 花こう岩とその上位のアルコース砂岩類については, 風化の階層構造が明らかになりそうであり, しかも, これまで一括して山砂利層とされてきたものが, その風化変質という観点から細区分できる可能性が生じてきている.
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