研究概要 |
関東の多摩・房総, 新潟の小国, 会津, 北海道の黒松内, その他の東北日本の下〜上部更新統から大型植物や花粉の化石を採取し, マツ科に属する分類群の出現と消滅の層位的状況を, 大型植物化石群集と花粉化石群集とから復元された古植生の時代的変化と対応させながら検討を行った. その結果は, つぎのとおりである. 1. PseudolaruxやPseudotsugdなどの鮮新世に広い範囲に分布していた分類群は, 更新世前期末(ハラミロ亜期)の寒冷地性の植生が出現する以前に消滅した. 2. Picea jezoensisやPinus koraiensisなどの, 沿海州・朝鮮・日本などに現存する寒冷地性の分類群は, 更新世前期末(ハラミロ亜期)にそろって出現した. 3. Picea cf maximowicziiまたはP,maximowicziiとされている分類群は, 鮮新世の後半(ガウス期の後半)に出現しはじめ, 更新世前期末(ハラミロ亜期)以降量的にも多くなり, 更新世後期末までよく産出する. これらの毬果遺体を検討すると, 中国北部や朝鮮北部に分布するPicea koraiensisに近似な形態的特徴を有するものであることが判明した. 4. Tsuga diversifolia,Abies veitckii,Larix kaempferiなどの, 現在日本列島に固有な分布を示す種は, 更新世中期(ブリエンヌ期前半)の寒冷な時期に出現している. 5. Picea glehniやLarix kamtschaticaなどの樺太-千島系の分類群は, 北海道では更新世中〜後期にみいだされるが, 東北地方では更新世後期の最終氷期に限定されている可能性が大である. 6. 会津の塔寺層上部からは0.15±0.03Ma, 和泉層上部からは2.17±0.37, 2.47±0.40MaなどのFT年代値を得た. 塔寺層上部の値はかなり新しすぎるので, 今後に検討を行う必要がある.
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