研究概要 |
1.北上山地の白亜紀花崗岩類はすでにI〜IV帯に分帯されているが、これらの各帯の斑れい岩類はそれぞれ特徴ある岩石学的・化学的特徴をもっていることをこの3年間の研究で明らかにした。また、阿武隈山地など、他地域の斑れい岩類の調査も行ない、地質学的にも滝根山付近において重要な知見を得た(永広ほか、1989)。第四紀の火山体深部での鉱物集積の情報も重要な知見となった(Kanisawa and Yoshida,1989)。 2.北上山地の斑レイ岩類はつぎの2つのグル-プに分類されることを明らかにした(Kanisawa,1990);(1)かんらん石とAn成分にとむ斜長石、およびパ-ガス閃石質のTiに富む初生ホルンブレンドをもつかんらん石-輝石-ホルンブレンド斑れい岩系列。(2)かんらん石と比較的An成分に乏しい斜長石で特徴づけられ、しばしばかんらん石と黒雲母、カリ長石の共存がみられる黒雲母-かんらん石-輝石斑れい岩系列。(1)の系列のものはI・II・V帯の岩体に伴われ、環太平洋地域の他の地域にみられる中性代深成岩類に共通の性格である。(2)の系列はIII・IV・VI帯にみられ、斜長石・鉄鉱物などの性質は比較的高温で晶出したことを示しており、白亜紀初期の火山活動の下部構造を表していると考えられる。 3.微量成分の性質は、いずれもLIL元素に富み、HFS元素に乏しく、Nbの負異常が認められ、島弧あるいは活動的大陸縁辺部の火山岩と同じ特徴を示す。IVおよびVI帯の斑れい岩類はK,Rb,Baなどのインコンパティブル元素に富む。分化の進んだ斑れい岩類は花崗岩類のパタ-ンに類似する。特にIV帯の斑れい岩類はほぼ花崗閃緑岩のパタ-ンに重なることVI帯のものはP,Zr,Tiでやや異なっているがNbの負異常も明瞭であり、花崗岩類のそれとほぼ一致する。IV帯には、ショショナイト系列と考えられる岩石がみられる。微量元素-SiO_2、Y-NbおよびRb-(Y+Nb)プロットによるテクトニクスの区分では明瞭に典型的な火山弧花崗岩の特徴を示す(Kanisawa and Yoshida,1989;蟹沢・吉田,1990)。 4.今後は、同位体比などを用いて、I・II・V帯の斑れい岩類とIII・IV・VIb帯のマグマの成因的な違いをさらに検討する必要がある。また、火山活動の下部構造とすると、マグマ溜りの構造を立体的に解析することも可能なので、これらの小岩体の精査を行なうことも重要であり、白亜紀火山岩類の性質も検討する必要がある。
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