研究概要 |
昭和62年7月1日から8月13日まで行われた研究船白鳳丸の航海KH87-3において伊豆・小笠原海溝(すみす島東方)とヤップ海溝の陸側斜面を詳しく調査した. 特に, 伊豆・小笠原海溝ではめざす地形的高まりの山頂部でドレッジを行い, オフィオライト組合わせに相当する各種岩石を多数採取しした. 本研究ではそれらの岩石試料の代表的なものを選んで数枚の薄片と数個の研磨試料を作成し, EPMAと岩石顕微鏡によって鉱物組成と組織を調べた. 採取した試料は一部蛇紋岩化したかんらん岩(ハルツバーグ岩, ダンかんらん岩)や変成した苦鉄質岩(ガブロ, ドレライト, 玄武岩), 角閃岩や, それらの破砕された礫, 砂, 泥から成る. こさらはまさにオフィオライトとよばれる組合わせである. かんらん岩と苦鉄質岩の岩相は破砕を受けた形跡をとどめている. 角閃岩は低圧高温型変成により生成したことがわかる. 地形的高まり周辺の連続音波探査データを再処理し, 詳しく読みとることから, この高まりは地質時代のある時期(それほど古くない時代)に基盤をつくる岩石が膨張し, 上を覆う地層を押し上げて貫入したらしいことが判る. この両方の根拠からこの海域の海溝斜面の高まりのうち, 特に大きいもの(北緯26°15′)と31°付近のやヽ小さい高まりは上部マントルからの(沈み込み帯の上盤のくさび状マントルからの)蛇紋岩ダイアピアーから生じ, 北緯32°31′から31°30′まで列をなす小丘群はその場でのかんらん岩の加水反応と変成による30%の体積膨張によるものであることが結論される.
|