研究概要 |
1.キンバイソウ属(キンポウゲ科). これまでシナノキンバイに含められてきた日高山脈の集団を独立種ヒダカキンバイソウとして再確認した. これを踏まえた上で, 日本産の本属は4種1変種から成るという見解を発表した. 2.トリカブト属(キンポウゲ科). これまでの研究の成果を統合して, 東アジア産の種類についてモノグラフを刊行した. この本では日本列島の他, 朝鮮半島, 中国東北地方, 千島列島, 歯舞諸島, サハリン, ソ連沿海地方などに分布するほぼ全種類を分類学的に整理し, 2節7列ノ亜列27種13亜種4変種を認めた. とくに北海道中央高地には固有の2倍種エゾノホソバトリカブトとダイセツトリカブトが分布し, かつ相互に自然交雑を起こしていることを詳述した. これらの2種に近縁な種ヒメトリカブトは朝鮮北部に分布する. 3.アザミ属(キク科). 日本産アザミ属の分類学的再検討の一環として, 岐阜県飛騨地方に未記載の植物があることを確認した. これは新種ヒダキセルアザミとして記載・発表する予定である(共著, 印刷中). ヒダキセルアザミは飛騨地方に特産し, キセルアザミに近縁である. 北海道のアザミ属についても研究を継続中である. 4.トウヒレン属(キク科). 日高山脈南部の蛇紋岩地域に固有なヒダカトウヒレンは従来北海道から千島, カムチャツカに広く分布するナガバキタアザミに含めて扱われてきた. しかし両者は, 総苞と総苞片, 茎葉の違いにもとづいて種レベルで区別されることをまず指摘した. そして道化・雨竜地方の蛇紋岩地域に特産する本属植物をヒダカトウヒレンの新変種ウリュウトウヒレンとして記載・発表した. 5.マンテマ属(ナデシコ科). スガワラビランジはサハリンや北東シベリアに分布する種で, 十勝支庁ニペソツ山に生育する植物はこれまでこの種にあてられてきた. しかし精査の結果, ニペソツ山の植物は新種であることが明らかになったので, 現在原稿を準備中である.
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