研究概要 |
スメティック液晶は層状構造を持ち, この層状構造は常に熱的に励起された大きな揺らぎをともなっている興味深い凝縮系である. 我々は低周波粘弾性測定装置を作成し, スメティック液晶相の流体力学的挙動に対する揺らぎの効果について有用な知見を得た. 測定系の作成:縦振動用及びずり振動用の振動子を用いた粘弾性測定装置を作成した. この2つの装置は試料の微小な粘弾性率の周波数依存性を数Hz-1kHzの低周波数帯で測定でき, 異方性を持つ試料の粘弾性テンソルを互いに相補的に測定できる点が特徴である. 縦振動用の測定装置に粘弾性の測定:液晶のSmectic-A相(S_A)及びSmectic-C相(Sc)で垂直配向の試料の力学的伝達関数の測定を行った. (1)層圧縮弾性率B:力学的伝達関数の実部より, Smectic液晶相特有の層圧縮弾性率BがS_A及びSc相で温度及び周波数の関数として得られた. (2)粘性η:測定されたS_A及びSc相の力学的伝達関数の虚部はκ+η^θωの形の周波数依存性を示した. これは粘性率ηにκ/ωの形の異常部分が含まれ正常部分をη^θとして粘性率はη=κ/ω+η^θと表され, 粘性率がω→0で1/ωで発散することを示している. 我々のこの結果は層の非線形な揺らぎを考慮したMazenkoらの理論の予測と一致する. (3)異常部分κとB:κとBの温度依存性の測定結果から両者には理論によって予測されるように強い相関があることを見いだした. ずり振動用測定装置による液晶相の粘弾性の測定:水平配向を強制したS_A相で測定を行った. 測定結果からは5つの独立な粘性率の内の2つのη_2, η_3の2つが直接かつ独立に求まり, 上記のような発散を示さないことを見いだした. このことはMilnerとMartinによる理論の予測と一致する.
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