研究概要 |
光源として波長0.8μm帯の半導体レーザー(日立製レーザーダイオードHL8311G)を用い, 散乱光のパターンの検出として赤外ビジコンカメラ(浜松ホトニクス製N2606-10)を使用してスペックル散乱パターンの基本的特性を調べ, 以下の知見を得た. 半導体レーザーからの光は通常の気体レーザーからの光とは異なり, ビーム断面形状が円形ではなく, 楕円形形状であることによって従来よく調べられているレーザースペックルとは異なる現象が観察された. まず, スペックルの統計的平均形状がビーム形状に対応して異方的である. このことは, フーリェ変換光学系において, 焦点面から離れた位置に物体をおいたときに観察されるスペックルパターンは物体が焦点前方にあるか, 焦点後方にあるかによって, 異なる方向に伸張する結果を生じる. 一方, 拡散物体が焦点面あるいはその極く近傍に位置するときのスペックルは物体が静止していても時間とともに変動する不安定なパターンとして観測された. これは, 温度変動によって半導体レーザーの発振状態が変化し, ビーム形状とそのウエスト位置が敏感に変動する結果と推測される. しかし, 焦点面からある程度離れた位置に物体がおかされたときには安定したスペックルパターンが観測されることから, この現象はスペックルの形成条件に依存していると考えられる. さらに, 物体が一定方向に運動するときのスペックルの運動特性は, 物体の運動方向とスペックルの異方性に関係した独特な運動として観察された. このように, 半導体レーザーを光源とするスペックルはそのビーム形状に強く依存する独特な特性をもつことが知られ, 今後, 光源の温度制御による安定化を計ることと, 理論的検討が必要であるとしても, 1.3μm帯の半導体レーザー(日立製レーザーダイオード HL1322A)を用いる近赤外光スペックルを利用する電子的スペックル干渉計測の実現に関して有益な知見が得られた.
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