研究概要 |
本研究は近年ますますその必要性が増大している短波長レーザー用の高耐力のミラーの開発の基礎的な研究として, 光学薄膜に生じているレーザーによる損傷または損傷以前の膜質の変化を光散乱や光音響信号によって検知解析しようとするものである. 以下に研究の成果をまとめる. 1.10^<-4>以下の吸収係数(k)をもつ各種の酸化物, フッ化物薄膜の吸収を光音響法で測定し, 紫外線レーザー用の膜材料の選択を行った. 2.10^<-2>〜10^<-3>の吸収係数の光学薄膜のレーザー損傷は, 光吸収-溶融破壊であることを, 理論/実験両面から明らかにした. 3.低吸収薄膜の光吸収で発生した内部応力で薄膜の基板からの剥離, クラッキングが生じることを明らかにした. 4.レーザー損傷強度の1/100以下の低レベルレーザー照射によって, 光学薄膜の吸収減少-損傷強度の向上が実現できることを示した. 5.吸収減少の曲線は際結晶過程の理論と良い一致を示し, 膜質改善は光学薄膜のアニーリング効果によるものであることが分かった. 6.多層膜のレーザー照射強度/光音響信号特性の中に, 複数の不連続点を観測し, 多層膜内の内部微小損傷がレーザー損傷強度の1/3程度で既に発生していることを発見した. 7.レーザー照射時の薄膜発光のスペクトルを観測し, レーザー照射による変化, 材料精製過程の影響を測定した. 8.レーザー損傷時には, 薄膜の固有発光スペクトルの異なる発光が観測されることを確認した. 破壊にともなう発光を高感度に観測すれば, 破壊強度をさらに高精度に決定できるだけでなく, 破壊の機構に関する情報を得ることが出来ると期待している.
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