研究概要 |
ガラス繊維強化有機複合材料(GFRP)は住宅機器,舟艇などの工業材料としてこれまでも多量に使用されてきたが、その優れた電気絶縁性,電波透過性、耐食性が注目され、核融合炉、磁気浮上車両、MHD発電などの超電導マグネットの電気、熱絶縁材料や支持材、航空機、宇宙機器の一次構造部材および低温圧力容器などへの使用も検討されている。 本研究では、最初に、ガラス繊維チョップドストランドマットを強化材とするGFRPを用いて、微視破壊を的確に検知することのできるAE法を併用した破壊じん性試験を行い、低温におけるGFRPの破壊じん性を検討した。その結果、室温の場合にはAE累積エネルギーの急増開始荷重より求めた破壊じん性値K_<AE>値はASTM E399の5%オフセット法から得られた破壊じん性値K_Q値によく一致するが、低温の場合にはK_<AE>値はK_Q値より大きく、一致しないことがわかった。また、K_<AE>値は低温になると大きくなることが明らかとなった。さらに、破面観察より、切欠先端に繊維と母材との界面はく離や母材の割れおよび繊維の破断の微視破壊が累積し損傷域が形成されることや、K_<AE>値に対応する荷重に達すると損傷域が急速に拡大することを明らかにした。微視破壊に関するこれらの知見に基づいて、破壊じん性値算定モデルを作成し、繊維の引張強さを変数として含んでいる破壊じん性値の算定式を導き、詳細に検討した。 次に、GFRPの片側切欠き試験片を用いて、引張り疲労試験を行なった。まず、疲労試験時に生じる損傷の巨視的様相と試験片のコンプライアンスの変化について考案を行った。つづいて、疲労試験時に計測したAE信号の解析および破面観察を行い、微視破壊を明らかにした。微視破壊に関するこれらの知見に基づきGFRP中に生じる微視疲労破壊を解明した。
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