研究概要 |
金属製円筒歯車は, その大部分が切削, シェービング, 研削などの除去加工によって創成されており, 鍛造, 転造など塑性加工の適用対象は小モジュールあるいは大圧力角の低級な歯車に限定されている. 幾多の努力にかかわらず, 生産性向上, 材料節約, 強度向上など塑性加工法のもつ利点が歯車において発揮できなかった最大の原因は, 鍛造においては工具圧下面・加工物材料間の摩擦(材料流動の阻害)に由来する歯の盛り上り不良, 転造においては変形の過多自由度(材料流動の拘束不完全)に由来する歯形およびピッチ精度の不良にあった. 本研究は, 転造によって自在に促進しうる材料の遠心流を鍛造類似の閉塞型を用いて拘束することによって高精度の円筒歯車を得ようとする新たな加工方式の開発に関するもので, 本年度に得られた実績の概要は以下のとおりである. 1.転造圧下部工具形状に関する検討:歯形成形部幅/圧下工具幅が1を下まわる場合には閉塞型への材料充満は完全に達せられる. 一方, 工具圧下面に3゜〜9゜の微小傾角を付与すると, 材料流動はさらに促進され好ましい結果が得られやすいことが判明した. 2.転造圧下過程に関する検討:かみ込み率が大きい場合には良好な材料流動が達せられるが, これが小さい場合(0.02mm/0.5rev)には歯形頂部の型内充満が達せられ難い. この傾向は理論的にも裏付けられた. 3.閉塞型転造の実施ならびに製品精度に関する検討:ワイヤカット放電加工によって作成された閉塞型(モジュール1.0〜2.0, 歯形20〜38)を用いて歯車を成形し, 製品精度が閉塞型の精度に一致することを確認した. 4.加工機の設計指針に関する検討:所要荷重, 位置決めストッパ特性, 圧下速度などに関する検討を行った. それらは, 理論結果とおおむね一致する.
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