研究概要 |
工作機械のNC化に伴い, エンドミル加工はますます高精度・高能率化を指向している. しかしラッフィングエンドミルに代表されるように, エンドミルの刃形に対する設計は, 従来荒加工の高能率化を図ることに主眼がおかれていたと考えられる. したがってフィニシングエンドミルと呼べるような, 仕上加工・専用の刃形はほとんど開発されていない現状にある. 一方プラスチック金型や航宙機用部材のエンドミル加工においては, 荒加工の高能率化にも増して仕上加工の高精度化が重要視されつつある. このような背影から, 本研究では荒加工の高能率化よりはむしろ仕上加工の高精度化を可能にするような, 新しいエンドミル刃形の開発を試みた. すなわち被削材側面の仕上切削時において問題となる. 工具の偏心に基づく加工の誤差を極力軽減させることが可能であるような, 等位相波刃形エンドミルの開発を行った. 本研究で得た主要な結論は, 1.工作機械の主軸とエンドミル中心軸との偏心に基づき, 被削材の板厚方向に生成される加工の誤差は, ねじれ刃エンドミルの刃数を増すことにより, いわゆる多刃エンドミルを用いることにより軽減される. 2.直刃の切れ刃軌跡を中心にして, 刃形をこうぐの円周方向に波状とした小位相波刃エンドミルによれば, 固数刃の多刃エンドミルにも増して, 高精度な加工面を得ることが可能である. 3.この小位相波刃エンドミルにより生成される加工面の形状は, 偏心の初期位相角や, 波刃の占有角に依存し変化する. 4.従来のねじれ刃エンドミルに比べ, 小位相波刃エンドミルでは切削関与角が小さくなるため, 切削荷重の増加は免れない. しかし直刃に比べると, 確実にその軽減を図ることが可能である. とまとめられる.
|