研究概要 |
歯車歯面に発生するリップリング損傷防止について研究した. リップリング発生についてアムスラー型摩耗試験機による円筒試験, 動力循環式歯車運転試験機による歯車試験によって実験的に研究を進めた. えられた結果を要約すると 1.浸炭焼入れ材(SCM415H), 高周波焼入れ材(S45C)および調質材では, リップリングの発生時期は殆ど異ならないが, 窒素鋼材(SACM645)では他の材質のものに比べてリップリングの発生時期は遅く現われる. しかし材質の違いによるリップリングの形態に差異は見られない. 2.材料硬度や組成によってリップリングの発生領域が微妙に変化する. すなわち浸炭焼入れしたSCM415Hが一番発生しやすく, 次に高周波焼入れしたS45Cの順である. 窒化処理したSACM645の場合には, 硬度が最も高い材料であり, 発生領域が非常に狭く, したがってリップリングを起こしにくい材料ということができる. 3.発生したリップリングの波長はすべり率に比例して大きくなり, ヘルツ接触圧にも依存する傾向が明瞭にみられる. また表面流動層は顕著にはあらわれず, リップリングの凹部と凸部に金属組織や硬度の違いはみられない. さらにリップリングの発生の有無は残留応力の変化には殆ど影響を及ぼしていない. 4.リップリング発生に及ぼす潤滑油の影響は顕著である. すなわちリップリングの発生領域で明瞭になったことであるが, 摩耗が進行する場合はリップリングが発生しない. したがって潤滑油中の添加剤によって, たとえば硫黄系の添加剤では摩耗が進行しやすく, リップリングは発生しにくい. 5.リップリングの発生が, ピッチング損傷に及ぼす影響について現在実験中であるが, 影響は少なそうである.
|