研究概要 |
高含水流体の摩耗防止性能を測定するために, 本研究では, 試作したボールオンシリンダ形摩耗試験機を使用した. 試験片円板を回転させ, その外周に12.7mm試験用鋼球を押しつけ, 円板及び球に生じる摩耗痕をしらべた. この種の試験は通常は定荷重で行うが, 本研究では定荷重の他, 変動荷重のもとでの摩耗防止性能をも測定した. 試験用円板は, 材質や硬さを変えた予備試験によって繰り返し精度の良いものを探し, 最終的にはSUJ2で焼入れ硬さHv850とした. 流体は水道水と市販の高含水流体の他に, 添加剤の種類と配合比を変えたものを5系統30種類調整した. 流体の摩耗防止性能は, 試験球上に生じる摩耗痕の面積を, 主なめやすとした. 円板が鋼球よりも硬いときに, 摩耗痕はかなり良い円形となる. 静荷重は試験機の荷重レバーにかける重錘により, 変動荷重は荷重レバー上に, 不平衡おもりを取付けた小形モータを取りつけ, 回転させることによって加えた. 比較的性能の良い高含水流体のもとで, 摩耗痕径を0.4〜0.6mmとするように標準試験条件を定めた. たとえば100m/minでは6Nとして30分間でこの値となる. 同じ条件で, 水道水を用いると, 摩耗痕径は3分間で3mmに達する. 変動加重の場合の変動成分は, 定常成分の約10%程度とした. 変動荷重によって摩耗痕面積自体はあまり変化しない. 摩耗痕を顕微鏡観察すると, 静荷重では条痕の集まりが見えるが, 動荷重では不規則な凹凸となっている. SEMで観察すると, 動荷重では微小凝着点が多数生じていることがわかった. 変動荷重では液膜が切れるが, 逆位相では液が供給され冷却が良い. 両者の効果が相殺して, 摩耗量は静荷重の場合と大差がない. 流体の性能評価及び弁別は安定して行うことができ, 添加剤の効果が濃度により変化する様子を明確に測定できた. 本研究により高含水流体の摩耗防止性能の基本的データを整えることができた.
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