昭和62年度に研究途上で開発された解析解と有限要素法を直接結合する解析法は本研究の直接の目的になっている弾性管と流体の連成系だけでなく、規則的な形状の部分構造を多く含む系の動的な問題の解析法としてきわめて有力なものに発展する可能性が認められた。そこで、本年度はこの方法の基礎を充実して、プライオリティーの確保に努力を傾注した。前年度は二次元閉領域の流体振動の固有値問題や変断面管内流体の過渡応答で提案する方法の有効性を確認したので、本年度はまず、無限領域を含む波動問題への適用を検討した。この問題は有限要素法では扱いがたく、また最近発展しつつある境界要素法でも対象外の閉領域の共振が発生するなど無条件では扱えないものである。ところが、提案する方法では境界要素法では必要な数値積分が不要となり、計算能率が向上するほか、特定の振動数域で計算不能に陥ることもなく、厳密解が得られる問題では精度の良さも確認できた。さらに複数物体による散乱波の干渉など複雑な問題への適応性も確認できた。そのほか、円技と流体の連成振動や水中のはりの曲げ振動、静的な二次元弾性問題など基本的な問題での有効性も確認した。このように新しい計算法を見出したためにその特性を明らかにする必要から基本的問題を多く取りあげた。これらも本研究に深い関係を持つものではあるが、直接の題目である弾性管と流体の連成系については研究の進行がやや遅れている。計算面では前述の新方法で対応できることが明らかであるが、その信頼性は実験以外に確認の方法がない。実験が予定よりかなり遅れたので早急に遅れを取り戻し、最終的な取まとめを行うこととしたい。
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