研究概要 |
精度良い速度制御を実現するために用いられてきた直流電動機に代わってベクトル制御方式誘導電動機は構造シンプルで堅牢なかご型誘導電動機を用いるため将来の電気-機械エネルギー変換の主力となるものと期待されている. 本研究では現在主として行なわれている開ループ方式のベクトル制御誘導電動機の性能と我々の導出した誘導電動機の状態方程式に最適制御理論を適用した閉ループ方式ベクトル制御方式の基本的な性能比較を行ない閉ループ方式が制御系のロバスト性において極めて優れていることを理解的にかつシミュレーションにより明らかとした. つぎにこの状態方程式に基づき銅損, 鉄損なの損失の解析を行ない, ある出力のもとで効率を最大にする条件を状態方程式の状態変数の関係として求めた. この効率最適化条件を常に満足するように制御することによって効率最適化制御が実現される. このときの制御目的は効率最適化制御, ベクトル制御, 速度制御の3つであり, これを同時に実現することが必要である. 本研究では最適レギュレータ理論に基づく制御系構成法を新しく提案し理論的検討とシミュレーションにより当初の目的である効率最適化ベクトル制御誘導電動機の有効性が示された. 3.7KWの誘導電動機において従来の磁束成分電流一定制御に比較して50%負荷で10%, 25%負荷では20%近い効率改善が得られた. この時, 同時にベクトル制御状態は保証され, かつ速度応答の劣化はわずかであるように制御されている. このように3つの制御目的を同時に実現できることは現代制御理論にもとずく本研究の大きな成果である. 今年度の基礎的な成果のとに来年度はより実際的なアプローチとして, 状態変数検出のためのオブバーバーの設計, あるいは動的補償器の設計, 適応制御の適用などの検討と実験的研究を進める.
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