研究概要 |
(1)水面上の単分子膜の双極子モーメント, 分子の極性に関する研究 水面を挟んで2枚の電極を配置し, 水面上に展開した単分子を圧縮しながら電極に誘起される電荷の変化によって流れる電流の測定の技術を開発した. この方法により直鎖飽和脂肪酸単分子LB膜の双極子モーメントを評価できることを示すとともに, 直鎖飽和脂肪酸系では水面に垂直方向に正電位を示すことを明らかとした. (2)LB膜の膜構造と電気特性の関係に関する研究 LB膜では分子が非対称性であるため極性を持っている. この特質を利用すればLB膜の累積時の膜の状態が把握可能となる. 本研究では長鎖アルキルTCNQLB膜を用いてこのことを明らかにした. その場合, 下地アルミナが重要な役割を果たし, 従来言われているようなZ膜であれば層数依存性がなく, Y膜であれば層数に逆比例するという関係は成立しないことを, 理論的並びに実験的に示した. (3)LB膜にみられる電荷現象の分離とその測定方法に関する研究 LB膜では自発分極, 外部電解による分極, 伝導電流の3種類が重要であるとの観点より研究を勧め, 熱刺激電流測定法を発展させ, 昇温速度を変えて電流および電荷量を測定する手法により, これらの電荷現象が分離できることを明かとした. この方法を長鎖アルキルTCNQLB膜の電荷現象に適用し解析した. (4)LB膜の絶縁性とトンネルスペーサーへの応用に関する研究 LB膜における欠陥の存在は電子素子応用で重要な問題である. ポリイミドLB膜の絶縁性を様々な確度から検討し, 20-40層膜を重ねることにより絶縁機能が現れることを明らかとした. ジョゼフソン接合素子の試作を行いLB膜では欠陥が存在してもコヒーレンス長以下のピンホールであるため極めて優れた弱結合型の素子が得られることも示した.
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