研究概要 |
X線リソグラフ, 光化学反応等の研究用に, 強力紫外線が要求されている. 赤外領域で安定発振をするYAGレーザー(波長1.06μm)が開発されているので, 高効率波長変換が可能な非線形光学素子を用いて強力紫外線発生を試みる方法が行なわれている. LAP(L+アルギニンーリン酸)結晶は最近発見された新有機線形結晶であり, 特に紫外線領域で従来用いられているKDP(リン酸第1カリ)の約2倍もの高効率を有しているが, 赤外線で, OH基等による光の吸収があるため, 高繰返しレーザー用には使用が困難であった. 申請者は, LAPの重水素化(D-LAP)を行なうことにより, 1.06μmでの吸収を減少させ, 高効率繰返(レーザー用波長変換素子の試作を行なった. 得られた結果は以下の通りである. 1.寸法1cm×1cm×2cm程度の透明なD-LAP結晶を育成することができた. 2.赤外線吸収スペクトル測定法により重水素置換率は, ほぼ90%程度と評価できた. 3.連続YAGレーザー光(出力5w)を照射, 結晶の吸収にらる温度上昇を調べた結果, 通常のLAPでは中心温度が約60°Cにまで上昇したが, ローLAPでは24°C(室温20°C)で約4°程度の上昇に過ぎず, 1.06μmにおける吸収が重水素により極めて減少していることが分かった. 4.Qスイッチレーザー光による耐レーザー損傷性を調べた結果では1nsecのパルス幅を持つYAGレーザーに対し, 内部損傷闘値は20J/cm2以上が得られKDP等の無機材料よりも強いことが判名した. 以上のようにD+LAPがYAGレーザーを用いた紫外線発生用非線形光学材料として極めて優れていることが判名したので今後はさらに大型の結晶を育成して行くと共にレーザー装置への導入, 紫外線発生の実用化を目指す予定である. なお得られた成果は1988年春の応物学会で発表を行なうと共に現在投稿準備中である.
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