研究概要 |
本研究では, 実数体あるいは複素数体上で定義される誤り訂正符号(アナログ符号)を用い, 秘話性を有する, 帯域12.5〔KHz〕の狭帯域無線電話方式の実用性の検討を行い, 以下に述べるような成果を得ている. 1.ランダムノイズの影響を受けにくい, 無線通信方式に適したアナログ符号の構成法を開発し, 新たに得られた符号の性能をシミュレーションにより評価した. 2.マルチパスならびにフェージング・チャネルのモデルを作成し, FM方式とアナログ符号を用いて符号化したPAM(パルス振幅変調)方式の伝送特性をシミュレーションによって調べ, 12.5〔KHz〕帯域のFM方式にくらべ, アナログ符号を用いて符号化したPAM方式のほうがマルチパスの影響を受けにくいことを明らかにした. 3.アナログ符号を用いたスクランブルによる秘話特性を検討するため, PAM信号とアナログ符号を用いて符号化したPAM信号を, 時間領域および周波数領域で比較したところ, アナログ符号を用いて符号化した符号語列は, もとの情報信号と時間領域, 及び周波数領域で互いに全く異なっており, その符号の生成行列を知らなければ, 情報を得ることができないため, 十分な秘話性を確保できることを示した. 特に, 符号化する際に符号語シンボルの入れ替えを行うことで, 一つの信号に対して幾種類もの符号語を作ることができるので, 暗号の鍵も十分多く取れるものと考えられる. 4.これらの結果から, アナログ符号を用いて符号化したPAM方式は, 12.5〔KHz〕狭帯域無線電話方式に基本的に適用可能であると考えられる. しかしながら, 本方式を実際に適用するためには, 電話において会話をしていない無音区間の秘話性の確保について検討する必要があると考えられる.
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