研究概要 |
本研究は音波の非線形現象を利用した指向性音源(スピーク)の実用化を目的としたものである. 得られた結果は以下の通りである. 超音波の非線形相互作用から発生する可聴音の大きさは会話時と同レベルあるいはそれ以上であり, また指向性においても1kHzの音でおよそ8°とかなり鋭く, 残響の多いトンネルや室内における緊急を要するアナウンスなど特殊環境内での使用に答えるものである. しかし, 伝播媒質即ち空気の非線形性が小さいことから電気から音響パワー変換効率が低い欠点がある. じけうらいの超音波変調方式は可聴音となる信号で超音波を振幅変調しており, 音声のようにかなり無音の状態が存在しても超音波を放射することで一層交換効率を低めていた. そこで, このような無音状態には超音波を放射しないで消費電力を少なくし, 効率改善を計った. これは音声信号の包絡を取出し, その情報を利用した超音波変調方式である. 本方式によれば従来より消費電力を半分以下にでき, よっておよそ2倍の効率改善がみられた. また, 本方式は無音時には完全に超音波を放射していないこともあってヒトの聴覚に与える超音波の影響を弱めることができ, スピーカの実用化に際し極めて有効な変調方式であることがわかった.
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