研究概要 |
1.本研究では, シルト性懸濁液の凝集と, 凝集した沈降・堆積した底泥の波による浮遊とに関する二種類の実験を行なった. 2.凝集実験では, 現地の現象を模擬するため, 懸濁粒子としては2種類の粘土鉱物(カオリン, ベントナイト)と現地感潮域4か所から採取した底泥を用い, 懸濁水としては含有イオンを実海水と同じに調整した人工海水を用いた. 得られた主要な結果は次の通りである. (1)全ての懸濁液で凝集がみられ, 海水に凝集力があることが確認された. (2)粘土鉱物懸濁液では海水と混合後, 2〜3時間で粒度分布が平衡に達した. この結果, 現地で凝集反応が完了する時間的目安が得られた. (3)全ての懸濁液で人工海水濃度10%で既に凝集がみられ, 30〜50%以上では粒径はほぼ一定となった. 現地では, 感潮域の上流部分から凝集が生じると推定される. (4)粘土鉱物に比して現地底泥は極めて大きなフロックを形成することがわかった. これは現地底泥の含む有機物の作用と考えられたが, 有機物を除去した現地底泥懸濁液では逆にフロックの大型化がみられる等, 現地での凝集機構は単純な要因では説明できない. 3.次に浮遊実験は, この目的で新たに製作したアクリル製の波動水槽を使い, 現地海水と水道水のそれぞれを用いて行なった. 底泥としてはベントナイトを水槽水と同じ水で練り混ぜて含水比を調整したものを用い, これを水槽中に長さ3mにわたり敷きつめ, 水深は27cmと19cmで波を2〜4時間経続して作用させた. 得られた主要な結果は次の通りである. (1)海水による実験では, 真水の場合のような底泥表面の破壊は起こらず, 底泥は波作用後数分以内に波動を始める. これは海水の場合, 真水の場合より底泥の流動性が大きくなるためと考えられる. (2)海水の場合, 底泥の質量輸送がみられ, 一方, 底泥の含水比の経時変化はほとんど出ない. (3)まい上りは海水の場合の方がはるかに少ない.
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