本研究は、コンクリート壁体に生じたひび割れを通して、どの程度気体が漏洩するのかを定量的に把握し、気密性を必要とする壁体の設計資料を得ることを目的としている。昭和62・63年度にわたり、補助金交付申請書の実施計画にしたがって、以下の研究を行った。 (1)みがき板ガラスを用いた理想ひび割れモデルの気体漏洩実験 (2)通常のコンクリートを用いた単一ひびわれの気体漏洩実験 (3)粗骨材の形状および粒度をパラメーターにした漏洩実験 (4)鉄筋の有無をパラメーターにした漏洩実験 (5)ひび割れ幅が変化した場合の漏洩実験 (6)ひび割れを通過する気体の挙動の解析および実験結果の定式化 以上の研究によって得られた具体的な知見を要約すれば次のようになる。 (1)ひび割れの生じたコンクリート壁からの気体漏洩量は、二平板間の圧縮性流体の一次元定常等温流れを表わす式を利用した実験式で定式化しうる。 (2)ひび割れ面の摩擦係数は、流量およびひび割れ幅の関数で表示しうる。 (3)壁両面の絶対圧力が大気圧近傍で、壁両面の圧力差が比較的小さく、見かけのレイノルズ数が比較的小さい場合は、二平板間の二次元ポアゾイユ流を表わす式を利用した実験式によって、十分な精度で気体漏洩量を定式化することができる。 (4)気体漏洩量は、ひび割れ面の形状に相当影響を受け、粗骨材の大きさ、形状、性質によって異なる。 (5)ひび割れ幅がゆるやかに変化する場合は、一定幅のひび割れからの漏洩量予測式を用いて、漏洩量を予測することができる。 (6)鉄筋が存在する場合は、鉄筋の近傍でひび割れ幅が小さくなり、気体漏洩は少なくなる。
|