研究概要 |
鉄筋コンクリート造(RC)はり部材のせん断耐力の評価は, 場所打RC造(はりとスラブを一体として製作する)でも, スラブ効果を無視し, 長方形断面で行っている. この背景には, 耐力評価式が長方形断面をもったはり部材実験結果より導いた実験式に依存しているのも大きな理由の一つである. 本研究では, 場所打ちを対象としたRCはり部材のせん断耐力評価にあたって, スラブ効果をどのように扱ったらよいかを知るため, T形断面をもつはり部材を作製し, 地震時にはり部材に生じる応力状態を想定した逆対称モーメント加工形式による実験を行った. 試験体に与えた要因は, スラブ幅で, 3水準(スラブ厚七とした時, 片側3t, 6t, 9t)の合計6体である. 規準となる長方形断面は, 実大の約1/3縮尺を想定した17.5×27.0cmで, スラブ厚さは5cmである. せん断スパン比は2.0と一定とした. 使用したコンクリートは, 最大骨材径10mmの豆砂利を用いたもので, 圧縮強度は, 262kg/cm^2であった. 実験結果と長方形断面をもとに提案されているせん断耐力評価式(実験式)と比較, 検討すると次のとおりである. (1)断面形状の差異が, せん断耐力に及ぼす影響は, あまり顕著にはみられない. しかし, 総体的には, T形課の方が, 長方形課よりもせん断耐力は上がっている. また, この耐力上昇には, 限界(スラブ幅の増大に対し)が見られ, 片側3t程度の評価にとどまりそうである. (2)逆対称モーメント加力形式で実験をすると, 単純ばり形式よりもT形断面のせん断耐力への影響は出にくい. 実験にあたっては, 逆対称モーメント加力形式による方がよいことを示している. これらより, 既往の評価式に対し, 等価断面としてスラブ効果を組み入れることは, 有効な方法であることを示す.
|