研究概要 |
建物内外の至所で見られる安全標識は, 案内表示として適切な性能を有しているかを評価できる判断規準を, 今だに設定していない. そこで, より見やすい標識を設置するための基礎資料を得ることを目的に, 公共施設に設置されている安全・誘導標識の中で, 方向の識別に多数使われている矢印標識を対象に, その見え方を調べ, ついで視認実験に基づいて色と形が識別に与える効果の定量化を試みるため, 規準視標による標識の見え方について, 周辺の明るさを変化させて検討した結果, 以下に示す事柄が明らかになった. 1) 地下街と百貨店の矢印標識の形は, 反射形と透過形の2種類で, 反射形のものが前者で10%未満, 後者では20〜40%となっており, 透過形の多いことが知られる. 2) 矢印標識の配色数は, 2配色が標識全体の85〜90%を占め, この中の50〜60%が避難口・通路誘導灯である. 3) 設置されている矢印形状の分類は, 大体5種類に分けられる. 調査場所別の使用状況をみると, 大体2種類が大部分を占めている. 4) 矢印標識の2色配色は, その9割強が有彩色と無彩色とによるもので, 各々視対象と背景との組合わせになっている. 5) 視認実験による視対象と背景との色の差異が, 識別に与える効果の定量化を, 対比感により検討している. 今回は, 刺激量に対する色の要因に関する物理量のデータを新らに抽出することができたので, 心理量と物理量との対応関係についての検討を深めることが可能となった. 以上の結果を, 照明学会全国大会, 色彩学会全国大会, 建築学会近畿支部で, 近く発表する予定である.
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