研究概要 |
1.本研究は,住宅における室内温熱環境の実態調査により温熱環境の現状を把握し,また,人工気候室実験により温熱環境と人体反応との関係を明らかにし,これらの結果を基に住宅における温熱環境の評価方法を検討し,温熱環境評価基準値を提案することを試みたものである。 2.温熱環境実態調査では,夏期の沖縄の伝統民家・通風住宅,厳冬期の旭川の高断熱住宅,および関相地区の最近建築された住宅を対象に,居間・寝室などの居住空間の温熱環境要素(気温,相対湿度,黒球温度など)を測定し,居住者の着衣量・温冷感・冷暖房器具の使用状態をアンケ-ト調査した。夏期の沖縄の室温は30〜33℃と高いが,通風により暑さを凌げる。関西の居間室温は26〜31℃で,通風の良い住宅では30〜32℃でもあまり暑さを感じず,室温が29℃を越えるとク-ラ-の使用頻度が増加し,室温はやや低い。厳冬期の旭川の居間室温は,20℃前後で基準値をほぼ満足する。関西の居間室温は10〜24℃の範囲にあり,上層(1m)と下層(0.1m)の温度差は4〜6℃と大きい。また,床暖房住宅では18〜23℃(床温は25℃〜33℃),太陽熱利用住宅での居間室温は17℃〜22℃と良好で,床温は日中18℃である。 3.人工気候室実験では,気流および放射熱の人材反応への影響を実験した。夏期実験では,冷風・変動気流の影響,快適な気流速度の選択,ク-ラ-冷風の影響を測定し,気流の気候緩和効果を明らかにした。ク-ラ-使用時の快適な室温は,26〜27℃である。変動気流が快適性に関わる「爽やか感」に影響する。冬期実験では,床暖房の実験を行い,室温18℃以上・床温27〜32℃で床暖房の効果が高く,床温35℃以上では低温火傷の危険があることを明らかにした。 4.温熱環境実態調査・実験室実験で得られた成果を検討し,住宅熱環境評価基準値(58年度),諸外国の基準値などとの比較検討を進めた。
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