研究概要 |
本研究の目的は, 近年増加している海外における日本人の設計・施工による病院プロジェクトに対し, 明快な病院計画方法を確立するため,対象地域として東アジア, 東南アジア, 南アジアを取り上げ, それぞれの地域に見合う病院計画方法の指針を得る点にあり, また, 国際比較の観点から日本及び欧米の代表的な病院の建築計画上の問題点を把握し, 多角的な分析を行なう点にある. 対象地域別に文献より自然条件・社会条件などの基礎的なデータを収集, 分析した. インド国を中心とする南アジア諸国の基礎データはWHO南・東アジア地域事務所により, よくまとめられている. WHO西太平洋地域事務所では1986年の東京ワークショップにて同様なまとめを開始している. 海外での病院建設に係わった建築設計専門家のヒアリング調査より, シンガポール国にて, 今後の同国の病院建築を左右するであろう日本を始め英・米・豪の設計事務所が参加する病院の設計競技が行なわれることが判明し, 特にシンガポール国の病院を中心に運営実態に関する調査分析を行なった. 対象として1985年に全面改築されたシンガポール国立大学病院(638床)および1954年に改築され今回の設計競技にて大規模改修の対象となっている国立トアパーヨー病院(410床)を取りあげ, 病院の運営状況全般に関する調査と病棟・手術部の使われ方に関する調査分析を行なった. 以上のシンガポール国の病院に関する諸データとスリランカ国スリ・ジャヤワルディナプラ総合病院(1000床)などのものと比較分析を行なった. また, 同様の手法を用いて, 日本を代表する病院の一つである神戸中央市民病院(1000床)の病棟部調査の分析を患者の居住性と看護の効率性の観点から行ない. 中部労災病院(620床)の手術部を調査し, 清潔管理・物品管理の観点から分析を行なった.
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