戦後発行された社会科教科書のうち、小学校社会科教科書118点、中学校162点、高校213点を集中的に分析して、都市教育に関する以下のような成果を得た(尚、入手した教科書は、それぞれ968点、629点、456点である)。 1)都市は、小学校の社会科、中学校の(総合・一般)社会、政治・経済(・社会)、公民、地理、高校の地理、政治・経済、現代社会でよく扱われた。 2)昭和20年代の教科書は、都市の生活を中心に、都市の目標などをよく描いた。30年代になっても、都市生活や都市の機能の説明が中心であり、芽生え始めた都市問題についてはわずかであった。40年代に入ると、都市問題や公害も新しく扱われ始めたが、高・中・小の順にそれらの記述が登場した。50年代に入ると、都市の環境についての記述が広く見られるようになったが、それも後半に入ってからで、体系的な都市と都市の生活様式に対する教育、都市問題の解明には、なかなか至らなかった。 3)全体を通しての幾つかの問題点を上げると、第1に都市と農村の対比の中で都市を描くことが続いていることである。20〜30年代の復興及び高度成長前では効果があっても、現在の都市の時代にその効果は疑問である。第2に都市問題の指摘で不十分かつ遅れがちで、しかも解明が未熟であることである。第3に小学校は一教科として教えられるわけだが、中・高は複数の科目にまたがり分散して扱われるため、結果的に体系的な教育に欠けることである。第4に都市及び都市的生活様式のあるべき姿が描けないことである。確かに敗戦直後は、都市の将来像も豊かな生活も描きやすく、それに反し、都市問題の多様化に伴い、描きにくくなったわけだが、子どもらに対し、何らかの未来像を示すことも教科書の役目である。 4)教科書の改善と同時に、各地域でのユニークな実践と教材づくりが重要である。
|