研究概要 |
まず世界全体で70年代から80年代前半で統計が入手できた59ヶ国について持ち家化プロセスを比較分類し, それを参考に環太平洋諸国の持ち家化過程を類型化した. 戦後の顕著な持ち家化の進行はアジアを含め世界的現象であるが, 土地資源, 政治体制, 経済発展度, 都市化段階などの諸条件の違いで, 持ち家所有の実態は国によってかなり異なっており, いわゆる先進国の借家重視国の住宅政策モデルは必ずしも後発国に妥当しないことが確認された. 環太平洋諸国の持ち家化過程は5種型されたが, 結果は次の通りである. (1)アメリカ型(アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド):公的借家が少なく一貫した持ち家化で共通している. 土地資源が豊かで住宅価格の対年収比が低いことが引き金となった. (2)日本型(日本・韓国):住宅政策の展開過程はアメリカ型に類似. 土地資源は少なく, 都市化速度も早い, 住宅供給技術は高水準. (3)シンガポール型(シンガポール・香港):公的住宅が成功していることで例外的. 都市国家で土地資源は局限されているが, 人口が相対的に少なく, 工業発展で住宅投資余力がある. (4)東南アジア型(フィリピン・タイ・インドネシア・パキスタン・バングラデシュなど):持ち家が極めて高率. 都市化の低い国では農村部のテニュアが効いていて持ち家率が高い. 都市化が急激に生じている国でも持ち家率は上昇している. つまり流入都市人口は, フォーマル・セクターで借家を供給しても家賃が払えず, 自らはスラムや不法占拠地にセルフビルドで住宅建設し入居する形をとるものが多い. (5)中国型:持ち家・借家のテニュア区分より, 公共・民間の住宅供給区分の方が意味をもつ公共セクターの供給だけでは住宅難解決の展望がむずかしく, 住宅投資を十分継続していけるといえず, コーポラティブ方式などの自発協同型の供給形式の導入が期待される.
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