研究概要 |
本年度は,中世民家と地域構造の考察と、昭和62、・63年度の研究内容をさらに深め、3年間の総括を行なうことが課題であった。 1.中世民家と地域構造の研究 (1)農家 農家の形成には個々の地域社会の特性が強く影響しているという見地から、とくに農家形式分布と政治支配構造との関連において考えてみることによって、戦国時代における地域社会の動向がいかに農家形式に反映したのかを検討したが、史料の制約から近畿地方の四間取型の成立にかかわって、河内の前座敷三間取型と畠山氏、和泉の食違い三間取型と細川氏、摂丹型三間取型の管領細川氏との関係を推定できた段階でとどまっている。 (2)町家 一方、従来ほとんど明らかでなかった町家の形成過程について中央都市京都との関係を検討した。従来、京都の町家=店舗付き住宅の成立要因を早くから発達していた都市商業に求め、『年中行事絵巻』や洛中洛外図屏風などの絵画史料から形成された店屋のイメ-ジを共有し、その巨大都市性ゆえに成立過程を特殊視していたが、そうした見解に再考をうながす結果をえた。すなわち、京都においても南北朝期においては『一遍聖絵』などにみられる市場の仮屋のような仮説建築が市や町の商業施設として基本であることが明らかになり、その結果、中央の巨大都市京都そして地方都市における町家の成立過程を同一の視点ーー共通性ーーからまず検討しなければならないこと、また市や「町」のありかた、すなわち商業の場の実態を都市においても史実に即して具体的に再検討しなければならないことを指摘した。
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