研究概要 |
1)ハーンローザー改訂著書を検討, 1971年までのアルバム研究まとめについては, われわれの既知するところとほぼ同じであることを確かめた. 2)A.E.プランデンブルグ監修フランス語版の訳読を果し, いくつかの新知見を得た. オヌクール村に大修道院の存在したこと, ハンガリーの研究者により, ピリスのシトー会教会堂にヴィラールの足跡が認められたこと, 1983年にヴィラール・ド・オヌクール協会が設立され, 水車の模型実験が行われたこと, 等々である. 画帖の一連の幾何図形についてベックマンがかなり詳細な考察を加えているが, 十六目方眼法等, われわれの理解の域には達していないことが判明した. ベルヌーの論文は画帖の中世的意義に新たな視座を与え, 説明文のピカルディー語の訛りについて興味深い事実をあげている. 3)ゾディアク双書の欠如分を購入, 図版資料の収集, 複写を進めた. 写真複製版により, 画帖の模造本作成を試み, ラシュス本と比較・写真版の大小や歪みを検討, 原本の寸法について考察し, 写真本の一部に不同を認めた. 4)画帖の幾何学図形が3種類の十六目方眼によるばかりでなく, 各図版全面について, やはり3種類の格子による構成のあることを明らかにした. ライオンの正面図や, ドラゴンの図案等, 複雑な図柄にもローマ寸, カロリング寸に基づく明確な構成意図が見られることを示した. 5)これまでの研究成果の要点を仏語論文にまとめ, 本学紀要「人文」に投稿, 印刷発行を見た. 欧文では未発表であったため, 関係方面の注目を得ると思われる. その他, 本年度研究分の新知見についても学会発表を行った. 6)ラシュス本により各図版をフロッピディスクに入力, 一部について格子方眼によるグラフィック解析を試み, その可能性を確かめ得たので, 引続き図柄の入力を進めている.
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