研究概要 |
スラグーメタル界面に生じる固体酸化物の局部溶損におよぼす印加電圧の影響を, 透明石英ガラスるつぼ-(PbO-SiO_2)スラグーPb系を用いて800°C, アルゴン雰囲気のもとで調べ, 以下の結果を得た. 1.スラグーメタル間に電圧を印加した状態で, るつぼ内壁に生じる局部溶損の進行状況と, その付近のスラグフィルム(SF)の運動を, るつぼの外側から光学的に直接動的に観察し, 映画フィルム等に記録することに成功した. 2.メタルを陰極にした状態での局部溶損は, 回路を開いた状態に比較して, 水平方向の溶損が小さく, 上下方向に広い幅をもつなだらかな溶損形態を示す. これに対して, メタルを陽極にした状態では, 水平方向に深く, 上下方向に幅の狭い, 鋭いくびれをもつ局部溶損形態を示す. 3.水平方向の局部溶損量は, メタル陰極の場合が最も小さく, 次いで開回路, メタル陽極の順に大きくなる. 4.局部溶損部のメタルーるつぼ内壁間に存在するSF(凝固後)には, SFの厚さ方向および, SF-メタル界面の上下方向にSiO_2濃度の変化が検出される. 局部溶損部のSFのSiO_2濃度は, メタル陽極の時が最も低く, 次いで開回路, メタル陰極の順に高くなる. いずれの場合にも, SF-メタル間の界面張力は, 下方ほど大きくなり, マランゴニ効果によりSFが, 下方に引張られていることを示す. 5.上記マランゴニ効果に基づくスラグフィルムの運動のもと, 溶解成分SiO_2の物質移動律速として導いた溶損速度式を用いて, 3の結果等を定性的に説明できた. しかし, 溶損速度の絶対値の一致は十分なものではなかった. 試料の急冷等により, 局部溶損進行時にできるだけ近い状態でのスラグフィルムの性状を明らかにすることが今後の課題と考えられる.
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