研究概要 |
申請者らは製品(四角筒容器)の寸法から成形段数, 初期素板形状, 各生成工程におけるダイス穴形状ならびにダイス肩部傾斜確度を自動設計する多段絞り金型の自動設計プログラムを開発した. 本研究ではこの設計プログラムの妥当性を検証するために, 深絞り性の異なる2種類の冷間圧延鋼板(SPCC, SPCEN, 厚さ0.5mm)を用いて, 長辺60mm, 短辺30mm, 深さ60mmの底付き長方形筒容器を3工程で製造するための深絞り金型を設計製作し実験をおこない, 以下のことを明らかにした. 1.金型製作 ダイスの型部傾斜面を上記プログラム通りに設計すると, 直辺部とコーナ部のつなぎの部分で傾斜確度の立上りが急なために深絞り工具としては不都合な形状になることが判明した. そこで両部をなめらかにつなぐための形状修正法を提案して3軸NC工作機械で製作した結果, 妥当な傾斜面形状が得られた. 2.形成実験結果 (1)第2工程終了時の容器板縁の微小な凹凸を紙やすりでていねいに整形した場合には, どちらの材料にてもほぼ深さが均一な容器を得ることができ素板形状の妥当性が確認された. (2)第2工程終了時の容器板縁の面性状が悪いと, 第3工程終了直前にコーナ部の板縁から割れが発生し, その傾向は深絞り性の劣るSPCC材でより顕著であった. しかし工程終了直前での板縁の広がりを治具を用いて拘束すれば, この板縁割れは防止できると考える. (3)ダイス肩部上での材料の流線は計算値と数%の誤差で一致した. (4)完成容器の側壁部の板厚が20〜30数%減少していたが, これは多段絞り容器特有の現象であり, 曲辺部の材料によって直辺部の材料の流入が拘束されたため側壁部が深さ方向に伸ばされたことを示す. 本研究によって, 申請者らの提案した多段絞り金型の自動設計法の有用性が確認された.
|