研究概要 |
Fe-C-Cr合金のヤング率-温度曲線3〜4%C,2〜4%Crの組成で室温からキュリー点(Tc)までの温度範囲においてエリンバー特性がみられる. 実測値の回帰式より算出した等熱弾性係数(e)-組成図においてec10^<-5>のエリンバー特性を示す組成範囲は3〜4%Cの狭い範囲に限られ, Cr濃度の増加とともにエリンバー特性を現わす炭素濃度は高炭素側へシフトする. 優れたエリンバー特性を示す最適組成は3.3%C,1〜2%Crであった. Fe-C-Mn系合金の場合は4%C-4%Mnの組成においてエリンバー特性がみられた. Fe-4%C-2%Mn合金ではe値は正となり, Fe-3%C-2%Mn合金では負となることから2%Mn添加合金の場合には約3.5%Cでエリンバー特性が現われると考えられる. Fe-C-Cr合金に比べてFe-C-Mn合金の場合にはe値の炭素, Mn濃度依存性がより顕著にみられることから, エリンバー特性を示す組成範囲はさらに狭くなることが知られた. 合金元素としてのNi,Mo,Cuは合金のヤング率を低下させ, 一方Si,Bは増大させる. エリンバー特性発現温度範囲はセメンタイトのTcに密接に関係しており, Si,BはTcを上昇させ, Ni,Mo,Cuは低下させる. 前者の元素のうちSiはセメンタイトの磁歪への影響は比較的小さいのに対し, BはTcを上昇させるが磁歪を小さくする. そのためBの添加量は0.01〜2%程度に抑える必要がある. 上記合金の熱間加工性は1050〜1100°Cで最も良好で3%C以下の炭素量の合金では圧下率70%以上の熱間加工が可能であったが4%Cの合金では加工性は低下した. Mn添加では熱間加工性の改善効果がみられ4%C-4%Mn合金においては圧下率70%以上の加工が可能であった. 加工材のヤング率-温度曲線はFe-C-Cr合金の等方材のそれに類似しているが圧延方向とその垂直方向で異方性がみられるものと思われる. また加工材中のセメンタイトは分断され粒状化したものや湾曲したものがみられることから高温ではセメンタイトは塑性変形しうることが知られた. 今後Ni添加合金のインバー特性を調べる.
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